クラニオセイクラル・バイオダイナミクスや身体に関する色々を気まぐれにつづります。
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心理学者として有名なユングさんの「黄金の華の秘密」を最近読んでいます。気功や東洋医療などに造詣が深い湯浅泰雄氏が翻訳に参加していることもあり、訳者の解説もあって情報が豊富です。
内容は、大雑把にいうと、中国の昔の瞑想法の文献「太乙金華宗旨」に、ユングさんが序文や解説を加えたものです。この書籍をドイツに紹介したのはユングさんではなく、R.ヴィルヘルム氏という中国学の研究者(司祭として中国に渡ったが、東洋文化に魅せられ、中国人の老師について易なども学んだという)で、原典の翻訳はヴィルヘルム氏の手になるそうです。ユングさんはヴィルヘルム氏からその訳文の解説を依頼され、読み込む中で、これまでの(あまり外部に公開しなかった)自分の発見や見解と一致する部分を発見するなどして、その後のユング心理学の体系確立の大きなヒントを得ていったそうです。
◆
私自身は心理学の専門家でもなければ、中国学や瞑想法に特に詳しいわけでもないので、何となく読んでいるだけですが、読んでいて、「クラニオ的(正確には「クラニオ・バイオダイナミクス的」というところですが、面倒なので以下「クラニオ的」とします)」とも取れる表現が色々と見られ、興味深く思いました。
特に感じるところがあったのは、八卦のうち「艮(ごん)」のユングさんによる以下の解説部分です。
「これは瞑想の姿であり、外的なものを静止させることで内面化の過程に生気を与える。したがって、「艮」は、死と生がふれあい、死して生きるあり方が成就される場所である」(「黄金の華の秘密」p141より)
◆
クラニオ(バイオダイナミクス)では、これまで書いてきたように、プラクティショナーが適切に静止し続けることにより、セッションを成立させるための環境・働きが結果的に生み出されます。また、セッションを受ける方の身体も、初めはやや混沌としたリズムを表現していることが多いですが(人によって差はあります)、そのリズムが一度静止したような状態となり、そこから新たな身体のリズムが再び現れる…という過程を大概は経過します。このような特徴と比較する限りにおいては、「外的なものを静止させることで内面化の過程に生気を与える」という表現は、クラニオの特性をうまく表現している気もします。
クラニオセッションを受け、「一度死んで蘇ったかのような感じ」というユニークな感想を持たれた方がありますが、この「艮」のようなエレメント・シンボルの特性と比較すると、その表現もまた、なかなかに的を射たものだったように思われます(もちろんセッションによって心臓が止まったりはしませんが…)。
先ほど挙げたように、クラニオにおける「静止」は、いわゆる「停滞」とは異なり、外的に止まっているようでも、実際は内面には新たな動きを内包している状態といえます。いうなれば、新たな動きを再び表現するために、体が準備している状態です。これは睡眠などの休息にも同じことが言えると思いますが、クラニオでは術者がそこに存在していることにより、普通の睡眠と若干違うことが起きているものと思われます。
いずれにせよ、静止というのは、何事も起きていないようでいながら、実は大変大きなポテンシャルを秘めた状態といえると思います。もちろん、いつまでも止まっていてはだめかもしれませんが、外面が動き続けることとはまた質の違うはたらきが「静止」に存在していることは確かです。停滞と静止の違いというのも、クラニオがぼんやり座っているのとどう違うのか、等のテーマと繋がりそうなので、考えてみると面白そうですが、脱線していきそうなのでここではやめておきます。
◆
ちなみに、(私のにわか知識によると)八卦の8要素はそれぞれ方位や季節と対応しており、「艮」は方位としては北東、いわゆる鬼門にあたります。鬼門というと不吉な感じもしますが、鬼門を警戒するのは日本独特の考えだそうで、中国では特に忌むべき方位ではないようです。季節としては、冬と春の間に相当します。冬のおわりもしくは早春というところでしょうか。
この卦のイメージとしては、冬の動きの少ない時期から、春の芽吹きという新たな創生に向かって力を今にも発動させようとする勢いを秘めたエレメント…という感じではないかと思います。あるいは、陰から陽への転換点、新たなステージに向かうための力を保っている状態などとも言えそうです。まあ、どのように表現するにせよ、「静中動(外見上静かな中に動きが秘められている・中身は動いている)」的な要素を強く持っている卦ではありそうです。
艮が鬼門と言われているのも、陰と陽の「境目」であることから、「異界と現界の門(「鬼」のような異界の存在が通り抜けられる場所・時間)」のようなイメージが含まれるためなのかもしれません。ちなみに、中国の「鬼」というのも日本の化け物としての鬼とは少し異なるようで、もっと深い意味があるような気もします。いかんせん今の私は理解不足のため、かなり推測でものを言ってしまっていますが、このあたりも本をもう少し読み込めば何かわかるかもしれません。
ともかく、八卦の8要素はこのように、それぞれの勢・特性を持っており、「連環する流れの中に現れる諸相」を仮に8種類で表現しているものと思われます。なお、8つが絶対ということもなく、易などではこの八卦を組み合わせ、8*8で64通りの組み合わせを使うそうなので、分けようと思えばいくらでも分解できるようです。
◆
なにやらいろいろ書きましたが、ここに書いたことは私の想像の範疇にすぎないもので、クラニオと八卦、あるいはユング心理学は(おそらく)直接の関係があるわけではなく、あくまで「近いものがある気がする」というだけなのですが、こうやって別の分野で似たような表現を見ると新鮮です。
まあ、何か共通点らしきものが見られるといっても、クラニオがすごい極地に達しているということではなく、各国でそれぞれの身体文化体系が発展する中で、それぞれの民族が無意識のうちに、「静寂の力」や様々な「大いなるはたらき」について似たような表現をしたり、似たような認識で捉えていたということかもしれません。もちろん、実際の表現や使われ方は文化や体系によって大きく異なるとも思います。
そう考えてみると、以前、クラニオは気功と異なる…などとドヤ顔で書いてはみたものの、クラニオと「外気功」とは異なるにせよ、「中国の瞑想」とか「内気功」の世界となら案外共通点もあるのではないか、という気もしてきます(どちらも詳しくないので何とも言えませんが)。新しい情報を得て少し視点が変わると考えも変わるし、世の中本当にうかつに断言できないことでいっぱいです。
このほかにも、この本にはクラニオの質・特徴について考えるにあたって、何やら色々なヒントが含まれているように思うので、また機会があったら何か書いてみようと思います。
参考文献:「黄金の華の秘密」C.G.ユング・R.ヴィルヘルム著、湯浅泰雄・定方昭夫訳、1980、人文書院
内容は、大雑把にいうと、中国の昔の瞑想法の文献「太乙金華宗旨」に、ユングさんが序文や解説を加えたものです。この書籍をドイツに紹介したのはユングさんではなく、R.ヴィルヘルム氏という中国学の研究者(司祭として中国に渡ったが、東洋文化に魅せられ、中国人の老師について易なども学んだという)で、原典の翻訳はヴィルヘルム氏の手になるそうです。ユングさんはヴィルヘルム氏からその訳文の解説を依頼され、読み込む中で、これまでの(あまり外部に公開しなかった)自分の発見や見解と一致する部分を発見するなどして、その後のユング心理学の体系確立の大きなヒントを得ていったそうです。
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私自身は心理学の専門家でもなければ、中国学や瞑想法に特に詳しいわけでもないので、何となく読んでいるだけですが、読んでいて、「クラニオ的(正確には「クラニオ・バイオダイナミクス的」というところですが、面倒なので以下「クラニオ的」とします)」とも取れる表現が色々と見られ、興味深く思いました。
特に感じるところがあったのは、八卦のうち「艮(ごん)」のユングさんによる以下の解説部分です。
「これは瞑想の姿であり、外的なものを静止させることで内面化の過程に生気を与える。したがって、「艮」は、死と生がふれあい、死して生きるあり方が成就される場所である」(「黄金の華の秘密」p141より)
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クラニオ(バイオダイナミクス)では、これまで書いてきたように、プラクティショナーが適切に静止し続けることにより、セッションを成立させるための環境・働きが結果的に生み出されます。また、セッションを受ける方の身体も、初めはやや混沌としたリズムを表現していることが多いですが(人によって差はあります)、そのリズムが一度静止したような状態となり、そこから新たな身体のリズムが再び現れる…という過程を大概は経過します。このような特徴と比較する限りにおいては、「外的なものを静止させることで内面化の過程に生気を与える」という表現は、クラニオの特性をうまく表現している気もします。
クラニオセッションを受け、「一度死んで蘇ったかのような感じ」というユニークな感想を持たれた方がありますが、この「艮」のようなエレメント・シンボルの特性と比較すると、その表現もまた、なかなかに的を射たものだったように思われます(もちろんセッションによって心臓が止まったりはしませんが…)。
先ほど挙げたように、クラニオにおける「静止」は、いわゆる「停滞」とは異なり、外的に止まっているようでも、実際は内面には新たな動きを内包している状態といえます。いうなれば、新たな動きを再び表現するために、体が準備している状態です。これは睡眠などの休息にも同じことが言えると思いますが、クラニオでは術者がそこに存在していることにより、普通の睡眠と若干違うことが起きているものと思われます。
いずれにせよ、静止というのは、何事も起きていないようでいながら、実は大変大きなポテンシャルを秘めた状態といえると思います。もちろん、いつまでも止まっていてはだめかもしれませんが、外面が動き続けることとはまた質の違うはたらきが「静止」に存在していることは確かです。停滞と静止の違いというのも、クラニオがぼんやり座っているのとどう違うのか、等のテーマと繋がりそうなので、考えてみると面白そうですが、脱線していきそうなのでここではやめておきます。
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ちなみに、(私のにわか知識によると)八卦の8要素はそれぞれ方位や季節と対応しており、「艮」は方位としては北東、いわゆる鬼門にあたります。鬼門というと不吉な感じもしますが、鬼門を警戒するのは日本独特の考えだそうで、中国では特に忌むべき方位ではないようです。季節としては、冬と春の間に相当します。冬のおわりもしくは早春というところでしょうか。
この卦のイメージとしては、冬の動きの少ない時期から、春の芽吹きという新たな創生に向かって力を今にも発動させようとする勢いを秘めたエレメント…という感じではないかと思います。あるいは、陰から陽への転換点、新たなステージに向かうための力を保っている状態などとも言えそうです。まあ、どのように表現するにせよ、「静中動(外見上静かな中に動きが秘められている・中身は動いている)」的な要素を強く持っている卦ではありそうです。
艮が鬼門と言われているのも、陰と陽の「境目」であることから、「異界と現界の門(「鬼」のような異界の存在が通り抜けられる場所・時間)」のようなイメージが含まれるためなのかもしれません。ちなみに、中国の「鬼」というのも日本の化け物としての鬼とは少し異なるようで、もっと深い意味があるような気もします。いかんせん今の私は理解不足のため、かなり推測でものを言ってしまっていますが、このあたりも本をもう少し読み込めば何かわかるかもしれません。
ともかく、八卦の8要素はこのように、それぞれの勢・特性を持っており、「連環する流れの中に現れる諸相」を仮に8種類で表現しているものと思われます。なお、8つが絶対ということもなく、易などではこの八卦を組み合わせ、8*8で64通りの組み合わせを使うそうなので、分けようと思えばいくらでも分解できるようです。
◆
なにやらいろいろ書きましたが、ここに書いたことは私の想像の範疇にすぎないもので、クラニオと八卦、あるいはユング心理学は(おそらく)直接の関係があるわけではなく、あくまで「近いものがある気がする」というだけなのですが、こうやって別の分野で似たような表現を見ると新鮮です。
まあ、何か共通点らしきものが見られるといっても、クラニオがすごい極地に達しているということではなく、各国でそれぞれの身体文化体系が発展する中で、それぞれの民族が無意識のうちに、「静寂の力」や様々な「大いなるはたらき」について似たような表現をしたり、似たような認識で捉えていたということかもしれません。もちろん、実際の表現や使われ方は文化や体系によって大きく異なるとも思います。
そう考えてみると、以前、クラニオは気功と異なる…などとドヤ顔で書いてはみたものの、クラニオと「外気功」とは異なるにせよ、「中国の瞑想」とか「内気功」の世界となら案外共通点もあるのではないか、という気もしてきます(どちらも詳しくないので何とも言えませんが)。新しい情報を得て少し視点が変わると考えも変わるし、世の中本当にうかつに断言できないことでいっぱいです。
このほかにも、この本にはクラニオの質・特徴について考えるにあたって、何やら色々なヒントが含まれているように思うので、また機会があったら何か書いてみようと思います。
参考文献:「黄金の華の秘密」C.G.ユング・R.ヴィルヘルム著、湯浅泰雄・定方昭夫訳、1980、人文書院
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HN:
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性別:
男性
自己紹介:
会社員生活の傍ら、手技セラピー「クラニオセイクラル・バイオダイナミクス」を学んでいます。
「★クラニオバイオリンク集」ではここ以外のクラニオバイオ関連サイトを紹介しています。
私自身のクラニオセッション等の活動は現在休止中です。
私のプロフィール的なものはこちら
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