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クラニオセイクラル・バイオダイナミクスや身体に関する色々を気まぐれにつづります。
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回想モードに延々と入っているのも何なので、今回はまたCV4、EV4と呼ばれるクラニオ技法…のようなものについてごく簡単に書いてみます。

パソコンの機器名や薬品名のような奇妙な名前の技法ですが、CV4は「Compression of 4th Ventricle」、EV4は「Expansion of 4th Ventricle」の略です。「Ventricle」は「脳室(脳の中央に位置する空間。クラニオも注目する脳脊髄液の産生、循環が行われている。)」です。むりやり直訳すると「CV4=第4脳室圧縮」、「EV4=第4脳室拡張」とでもなるのでしょうか。訳すると人体解剖チックなますます恐ろしげな名前となりました。

しかし、圧縮や開放と言っても、本当に第4脳室をいじりに行くわけではありません。脳に変なショックを与えるだけでもやばそうですが、第4脳室は人体の生命維持機能を司る「脳幹」にも隣接していますから、下手にそんなことをしたら大変なダメージを受けそうです。
もっとも、クラニオ技術の黎明期はどうすればよいのか分からないので、特殊な手の形で頭部を圧縮することで本当に圧をかけていたようです。ただ、時代を経るにつれて、そんなに無理やりな事をしなくても、ごく微量の意図、あるいはそれ以前の刺激と言えないほどのものでも身体は反応しているらしい、ということが分かってきたため、今は「圧を加える」と言っている流儀もごくソフトに行っていると思います。今はただ、黎明期の名前がそのまま残っているというわけです。なお、圧を加えなくても、第4脳室が結果的に自分で広がったり、締まったりするという働き自体は現代verでも多分起きているのでしょう。


で、何をするかですが、CV4,EV4のどちらも、受ける人の身体(主に頭部)に触れ、「1次呼吸」の極で待つということをします。
(これまで書いてきたように)1次呼吸は人体のリズムで、肺呼吸のように閉じる-開く、伸びる-縮むのような(厳密にはちょっと違いますが、とりあえず分かりやすくそう表現します)とてもゆっくりな動きを全身に常時提供しており、そのリズムに乗るようにして、脳脊髄液もまた、代謝的活動をしているようです。
なお、1次呼吸自体は「働き」であって、伸びたり縮んだりしません。伸びたり縮んだりするのは、その働きによって「動かされている」人体のほうです。身体が勝手に伸びたりしているので、その裏に1次呼吸のはたらきがあるんだなと、触れる人は間接的に分かる感じです。

で、その1次呼吸には、「極」があります。大雑把に言うと伸びきった瞬間と縮まりきった瞬間のようなものがあるということです。さらに、その極には「スティル(静けさの意)ポイント」と呼ばれる静止の時間もあります。体感では結構長く止まっています。リズムが「伸びきった」後、若干の静止を経て、「縮まる」リズムにターンする、「縮まりきった」後にも若干の静止を経て、「伸びる」リズムにターン…といったことを繰り返しているとでも想像して頂ければよいです。かっこよく言えば、人体は「陰極まりて陽となる」みたいなことをずっとやってるといえましょうか。


そして、CV4の場合は、「縮まりきった極にある静止」に来たときにその静止をなんとなく意識してみます。逆にEV4の場合は「伸びきった極にある静止」に来たときに、その静止をなんとなく意識してみます。本には「そこから更に静かな状態に入れるか提案する」ような記述があります。細かい1次呼吸の更に細かい部分が分かる必要があるので、実行にはそれなりの知覚が必要となります。
1度のターンで何も起こらなかったら、次のターンでも同じことを繰り返します(見た目上何もしていませんが)。すると、身体は(気分が乗れば)さらに静かな状態に入っていき、そこで休息するように長い時間静まります。何度もターンを待って、何も起きそうもないならば、あきらめます。1次呼吸をただ十分に感じるだけでも、身体にとっては休息になっているので良しとします。無理やり「静まれよ!」みたいなことはしません。

というわけで、名前は違いますが、手順はよく似ています。しいていえば、一般的にはCV4では後頭部、EV4では側頭部に触れる事が多いようです。ただ、どちらも仙骨に触れてでもできるようです。実際、1次呼吸のリズムの狭間にある静止状態が捉えられるかがポイントの技法だとしたら、どこでも良いとは言えないにせよ、触れている部位は頭部にこだわることもないのでしょう。なお、これはあくまで私が習った範囲の内容を私なりの言葉で書いているもので、同名の技法でも別流儀のクラニオでは多分別の方法を使うと思われます。しかるべき手段として体系的に残っているものに関しては、どれかが誤っているわけではなく、方法論や目的が違うだけでしょう。

※(その後の追記)バイオダイナミクス派の場合、技法としては何となく1次呼吸の極がわかることが前提なので、EV4もCV4も、受ける方が落ち着けるポジションならどこでもできます。もっとも、鼻骨や蝶形骨など細かいもしくはデリケートな部分に触れて行うことは難しいと思うので、後頭骨、仙骨、足首辺りで行うのが無難でしょう。
ちなみに、上記で明示していませんが、私が学んだバイオダイナミクス派のCV4、EV4は、1次呼吸の複数あるリズムのうち、一番早いリズムのCRIではなく、ミッドタイド(1分につき1-3サイクル程度)かロングタイド(100秒につき1サイクル程度)のリズムにあわせて行います。

両者の用途、もしくは起こる結果としての違いは、EV4は主に鬱滞しているエネルギーを開放するような働き、CV4は逆に疲れ切った身体にエネルギーをチャージするような働きを起こしやすいと言われています。起こしやすいというだけで、そうなるとも限らないわけですが、まあ、そのような傾向がある気はします。EV4では静まった後に身体からエネルギーがわき上がっていくような感じ、CV4では、静けさの中で身体に滋養が蓄えられて穏やかに目を覚ますという感じでしょうか。臨床の場ではクライアントさんの状態に応じて使い分けられているようです。

※(その後の追記)私が学んだバイオダイナミクス派の場合は、受ける方の身体全体の雰囲気がかなり疲弊している、もしくはかなり活性化していると感じられる場合に主に使用する選択肢となっており、個人的には意外と出番がないスキルです。


まあ、こんな感じです。ただ、よく考えてみれば、これもまた、クラニオ・バイオダイナミクスの最大の特徴が、身体の叡智を信頼して手を加えないことだと主張するのならば、クラニオ・バイオダイナミクス的態度を徹底したときには微妙な立ち位置の技法とも言えるかも知れません。
別に殊更にCV4,EV4どちらかに導こう(導き方が「提案」程度のものだったとしても)としなくても、術者の対応(余計な事しない態度)が適切であるならば、身体は必要に応じてEV4なりCV4なり好きなほうの状態に入るんじゃないだろうか、と思わなくもなかったりします。このあたりは「もう一歩の手助けがあればCV4に入れるとして、その背中を押すべきなのか、信頼して待つべきなのか」といった態度に関わると思われますが、今の私は経験がまだ少ないこともあって、何とも言えません。なんとなく、待ちたいなと思っているというのはあります。

この2つは「クラニオの技法」としては有名ですし、Vスプレッドなどに比べれば、どうしても必要ならば使ってもいいかなとも思いますが、改めて「クラニオ・バイオダイナミクスとは何か?」「私はどんなクラニオ・バイオダイナミクスのセッションを提供したいのか?」を考えるにあたって、いろいろ無視し得ない部分がある立ち位置の技法であることは確かなようです。

■※(その後の追記:2020ver)
最後の部分で過去の私は色々迷っていますが、その後年数が経過し、私の理解の上でも、私が習う講座の内容の上でも、CV4やEV4はセッション中に意識的に行うべきスキルではない、という結論に至っています。

上記の通り、記事を書いた当時の私は、これらのスキルはバイオダイナミクス派が本来目指すはずのスタンスと矛盾するのではという思いを持っており、更なる違和感を覚えていた2014年時点では『バイオダイナミクス派の場合、「CV4はこういう場合使う」等のような、「こういう場合こうする」というハウツー的な選択肢に基本的に頼らず、サザーランド博士が言うところの「静まりて知るべし(Be still and Know)」の方針で万事に対応することが技法的特徴であり、魅力でもあるように感じます。』…というやや控えめなコメントや、『くたびれている・活性化しているように感じられる方の身体システムも、大概は1次呼吸を意識せず、基本的な触れ方をしているだけで、自然とエネルギーを開放したり落ち着いたり、必要なことをしているようだ、と感じることがあり、身体は自然と必要なことを選択していると思うところです』という感想を追記しています。結果的に、当時から感じていた私の違和感は間違っていなかったようです。

セッション中にCV4やEV4の使いどころが事実上ない主な理由としては、どんな形であれ、ある状態にクライアントを意識的に誘導しようとすることで、身体システムの自己調整に用いられるはずのクライアントのエネルギー(ポーテンシー)を消費させてしまい、身体システムが余計疲弊してしまう可能性が高いためです。プラクティショナーの介入の度合いによっては、身体に余計なパターン(不活性ファルクラム)を付与してしまい、調子が悪くなる可能性すらあります。
CV4やEV4は弱っているクライアント向けの方法とありますが、上記の通り、弱っているクライアントに対して多少でも操作や誘導を伴うワークを行うと、余計弱ってしまう可能性が高いので、「そもそも上記のような方法で行うCV4やEV4は、弱っている人に行ってはいけない」といえます。

ちなみに、弱っている方に対するセッション方針としては、極力一次呼吸を探したり意識しようとせず、プラクティショナー自身のスティルネスやプラクティショナーニュートラルに伴う安定感などにつながり、クライアント周辺のフィールド(体の内部の動きではなく)などの存在を軽く意識しつつ、ただ静かに触れているのが良いと思います。劇的な変化が起きなくても、クライアントのポーテンシーの蓄積を結果的に促してくれる可能性が高いと思います。

結論としては、現時点において、CV4、EV4は実際に現場で使うものというより、クラニオの基礎学習の過程で、1次呼吸の多様な表現に慣れ親しんだり、クラニオがワークを発展させていこうとする試行錯誤の道のりを追体験するために(元気な生徒さん同士で)行う「学習用ワーク」の1つといったほうが良いと思います。

[参考文献]クラニオセイクラル・バイオダイナミクス volume1 Franklyn Sills著、高澤昌宏訳、エンタプライズ出版部
※(2014/8)比較的反応が多い記事のようなので、現時点の理解を若干書き足しました。
※(2020/2)習っている教室側の見解もここ数年で大きく変わったため、追記を修正しました。

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朧 こと 今野
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会社員生活の傍ら、手技セラピー「クラニオセイクラル・バイオダイナミクス」を学んでいます。

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私自身のクラニオセッション等の活動は現在休止中です。

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